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インド人の秘密 2019年2月

村上いづみ 保健医療専門家(フィジー共和国)

フィジー保健省、9時、今日も「豆はいらんかー、ロティ・タルカリはいらんかー(丸く平たいクレープのような形のパンにカレーの具を巻いたもの、インドの朝食の定番)」と受付の方向から声が聞こえる。バラバラと集まる職員たち、次々に売れる煎り豆とロティ・タルカリ。おじさんのかばんには、この他にあつあつの小さな野菜入りのドーナッツとかりんとうもある。煎りえんどう豆は小さいパケット1つが1ドル(50円)、ロティ・タルカリは新聞紙にくるまれて、1.5ドル(75円)、ドーナッツは5つほどの塊が入って1ドル(50円)。

なぜ、インド人はこの様な「小間物売り」をするのだろうか?

ネパールの歩いて7日かかるような村にもインド人の小間物売りが来ていた。竹の棒にペナペナのプラスティックで出来た玩具や髪留め、首飾りなどをさして掲げ、かばんを一つ下げて村の家々を回っていた。商品の補充はどうするのか、食事はどうするのか、盗賊に襲われないのか、出会うと疑問ばかりが渦巻いていた。労力をかけた分だけの売り上げがあるのだろうか?

長い間コミュニティの保健医療に関わり、手を洗いましょう、歯を磨きましょう、トイレを作りましょうといろいろな国で言ってきた。しかし、1990年代に入った頃を境にコミュニティの衛生事情が変化を見せてきた。それは、シャンプーや、石鹸、歯磨き、クリーム等のパケット化である。衛生状況を向上させるために、大きな容器に入ったシャンプーは変えなくても、小分けになった1回分5円程のパケットは買うことができる。

販売会社の方針は当初10パケットを店、または村のおばちゃんに買ってもらい、1パケットをおまけで付けた。その1パケット分が自分の儲けになった(現在では競争が激しくおまけがもっと多い、バングラデシュでは資生堂が日焼け止めパケットを発売中)。このパケット化による販売の成功は、実は小間物屋でものを買うという消費行動の下敷きがあったからではないかと推察する。

インド人の小間物売りは今でもネパールの山の中を歩いているのであろうか?答えはノーである。今ネパールの山岳地帯は出稼ぎで過疎化している。高齢者しかいない。小間物屋も回ってこない。

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