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"トルコ ギレスン県 A to Z" Zuruf(萼、がく) 2018年 No.9

小村浩二 ボランティア事業企画調査員(トルコ共和国)

ギレスンに来てからヘイゼルナッツ(fındık)に関連して初めて耳にした言葉がある。

フンドック・カブー(fındık kabuğı)、フンドック・パトズ(fındık patoz)、ズルフ(zuruf)である。順にヘイゼルナッツの殻、ヘイゼルナッツ専用脱粒機、萼である。これらがどのように仕事と絡んできたか。

ヘイゼルナッツは、ドングリの一種である。収穫は、まず枝先についたヘイゼルナッツをもぎ取ることから始まる。この時、ヘイゼルナッツはまだ緑色をした萼に包まれておりこれもろとも取る。もしくは、日が経つにつれてヘイゼルナッツが熟してくるのを待ち、萼と一緒に落下したそれを拾い集める。

集めた萼付きのヘイゼルナッツは天日干しされる。萼が適度に乾いたところで、フンドック・パトズでヘイゼルナッツと萼を選別する。ヘイゼルナッツは袋に軽い萼は風で機械から吐き出される。ヘイゼルナッツはこの後さらに天日干しして適度なところで袋詰めして保存され販売のタイミングを待つことになる。

ここからが本題である。

パトズの前に山積みとなった萼、殻の処理である。それぞれについて出たアイデアが、萼はコンポストに、殻は燻炭処理して土壌改良材とする。トルコ人の前者に対する反応はいまひとつ、後者に対しては若干の興味を示した。調べてみてこの反応の違いがわかった。

萼は、そもそも昔から家畜小屋の敷き床として使われてきており、堆厩肥として畑に還元されていた。また、県農業局、ヘイゼルナッツ研究所で萼、堆肥、生石灰を混ぜたコンポスト作りを紹介し推奨していることがわかった。殻は、ヘイゼルナッツを売却した時点で農家の手を離れる。農家は殻が欲しければ買い戻さなければならいない。また、殻を燃料として購入したパン屋から燃焼後の副産物として燻炭が出る。これもバーベキュウの焚き付けなどとして販売されている。つまり、有価商品なのだ。農家が、殻の燻炭を使った息の長い土壌改良のために自腹を切ってまで取り組むはずがない。

そうそう一定年限の経った経済性の落ちた幹は、切られて更新される。腕の太さくらいはある。これは薪として利用されている。農村部では薪ストーブがまだまだ現役でがんばっている。また、かまどが現役でパン屋とか薪の需要は都市部でも結構ある。

ギレスンに来て日の浅い我々のアイデア、ヘイゼルナッツから出る農産物残渣活用のアイデアは、夢と潰えた。

トルコから連想する飲み物を三つあげてください

一番に思いつくのはトルコ・コーヒーでしょうか、それともチャイ(トルコのお茶)でしょうか。トルコのことを知る人は、この二つは即答できるでしょう。では、もうひとつあげるとすれば何でしょうか。ヒント、それは白い飲み物です。白でピンとくれば、なかなかのトルコ通といってよいでしょう。

さて、今年(2018年)7月、お茶に関するニュースが2件あった。トルコと日本からである。ともにお茶の輸出が伸びていることを伝えるものであった。トルコのそれは、今年上半期93ヵ国へ輸出し、450万4632ドル(約1億8025万円)稼ぎ出したとのことである。輸出額の53%を上位5ヵ国で占めた。その国は、ドイツを筆頭に北キプロス・トルコ共和国、アメリカ、ベルギー、オランダであった。アメリカを除いた4ヵ国で43%である1)。お気づきであろうか、チャイの消費を支えているのはどうも国外に居住するトルコ人のようである。

では、日本はというと、今年1月~5月の緑茶輸出量1,978トンと前年同時期比で4%増とある。輸出先は、2017年の数量ベースでアメリカ(30%)がトップ、次いで台湾(23%)、シンガポールとドイツ(各7%)、ホンコンとカナダ(各4%)と続く。日本の緑茶は、海外での健康志向や日本食ブームにのって抹茶として飲料や食品として使われアメリカやアジアで需要が伸びているそうだ。「抹茶ラテ」をメニューに取り入れるカフェがあり、スイーツに抹茶を使う動きが広がっている2)。一工夫することで、新たな消費者層が国内から国外へも形成され輸出増につながっている。

2014年7月にヤイラを巡った際に見掛けた家畜は、ウシ、スイギュウ、ヒツジ、ヤギであった。人びとがヤイラで活動する期間は、5月中旬から9月下旬にかけてである。滞在中、搾った乳をバターやチーズに加工する。特にスイギュウの乳製品は高い値がつくそうである。

このように両国にとって外貨を稼いでくれるお茶であるが、いろいろと課題もある。中でも共通の課題、悩みがある。工業化を進めることで経済発展したのはよいが、経済成長とともに第一次産業の就業人口はその割合を大きく低下させた。その課題とは、生産者の高齢化と後継者不足である。この労働力不足は如何ともしがたい。機械化し省力化を図っても限度がある。やっと外貨を稼げる世の中になったというのにである。

後継者の育成、経験知の伝承は待ったなしである。

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