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アソシエイトレポート 2024年5月

「トンガの自立と支援」

中曽根 徹治
トンガ王国(企画調査員)

※中曽根さんは2024年1月末にトンガ王国での任期を終え帰国しています。その帰国前に投稿したレポートを今回掲載します。

3年5か月のトンガ勤務が間もなく終わります。赴任後2か月でコロナが拡大し、トンガ発最後のチャーター便で日本へ退避し2週間の隔離。日本での退避勤務7か月後にフィジーで3週間、タプで3週間の隔離を経て2ヵ月を掛けてトンガに帰任。その後HTHH海底火山の噴火、それに伴う津波・降灰によりトンガは大被害を受け、ネット環境が断絶した中での執務。振り返ってみるとなかなかにハードな環境での勤務だったのですが、任期も終盤となるとそれも良い経験だったなと思えるから不思議です。

そんな中で最後にトンガの自立と支援について考えてみました。大洋州の小島嶼国はMIRAB型経済などと呼ばれることもありますが、国の自立に焦点を当てると、大洋州の国々は①資源が比較的豊富で自立し地域への影響力を持つ国、②支援を継続し人材育成などが進めば自立の可能性を持つ国、③脆弱性が高く継続的な支援が必要な国に分類されます。トンガの経済は当然MIRAB経済なのですが、自立の観点からは上記の②に該当します。でも果たして本当にそうなのかと現地で過ごすと感じてしまいます。

トンガにおける主要インフラの内、日本は国内港湾埠頭、ファーモツ国際空港、主要幹線道路、全国早期警報システム、離島間連絡船、バイオラ病院などをこれまでに支援しています。現在80MUS$規模の国際港拡張をADBとオーストラリアが実施しており、NZは首都圏の電力網改善を支援しています。更にNZはオーストラリアとの連携にて海底ケーブルを敷設しリダンダンシー向上を計画しており、ADBは100MUS$規模とも言われるラグーン連結橋の建設支援も予定しています。

トンガ放送局(全国早期警報システムの一部)
国内埠頭(右に停泊中のフェリーも日本支援)

上記のように主要インフラは殆ど支援で成り立っており、この状況を見るととてもトンガに自立の可能性があるとは思えないのが正直な所です。またこれらインフラの将来的な更新までに、トンガ政府が十分な歳入を確保している姿を想像するのも難しい状況です。。。

可倒式風力発電(沖縄連携)
コンテナICUユニット(バイオラ病院)

外交的には国際場裏での日本支持への期待、大洋州の地政学的リスクの高まり、などと言われます。国民から「海外支援している暇があるならまず日本の困っている人たちに税金使え」と言う声があるのも分かる気がする一方で、「資源の無い日本は様々な国と友好関係を維持せねばならず、国際協力もその一手段」という考え方もあると思います。

トンガを含めた大洋州の島嶼国への支援を続けて行くべきか。ODAの大きなポーションを占めるアジアへの支援は、日本企業への裨益等の意識が強くなる中、日本やADBなどの有償支援で中国企業ばかりが受注しているのを見ると、無償中心で日本企業タイドの島嶼国への支援は継続しても良いのではとも思えます。一方で日本の国力が失われていく中でもうそろそろ島嶼国への支援の終わりを見据える考えがあっても良いのではと考える自分もいます。

正直どっちが良いのか分かりません。でも独自の文化を持つ王国、大きな躯体と優しい心を持つトンガ人に触れ、感情的な思い入れが生じてしまうと、小難しい理屈は抜きにして単純に日本の支援を継続しても良いのではという思いが強くなります。

そんな訳で経済的な自立は多分できないので、日本が続けられる限りトンガへの支援を続けてほしいなという結論になりました(笑)。まあこの仕事に関わる人は「日本の国力が・・」などの理屈よりも感情を優先して仕事をしている人も多いのではと思っているのですが、どうなんでしょうかね。。。最後にトンガでの3年5か月に感謝!!

CEPプロジェクト(パンの木の苗木)
ボランティアと一緒にトンガマラソン