ラオスで鉄道に乗る(往路:ビエンチャンからウドムサイへ)
小熊 誠
ラオス人民民主共和国(プロジェクト業務調整)
出張日当日。朝6時、夜が明けぬ暗い中、家を出て、ビエンチャン駅に向かう。7時半発の電車に乗るには1時間前に着いていないといけないからだ。夜が明けるという朝焼けの中、市内から10数㎞離れた駅に到着する(写真1)。駅舎にはラオス語で「ナコーンルアン・ビエンチャン(=ビエンチャン首都)」という文字が見られ、その下には「万象」と中国語で表記されている。Vientianeという英語表記はない。駅すぐ近くの看板もよく見ると、「中老鉄路」とある。英語ではLaos-China Railwayであるが、漢字では中老鉄路である(写真2)。
駅舎入口は乗客でごった返していた(写真3)。というのも、駅構内には乗客しか入れないからだ。プラットホーム内なら、乗客しか入れないというのはわかるが、駅舎入り口でさえ、乗客のみである。入口で、チケットとパスポートのチェックを受け、中に入るも、次は空港のように荷物検査がある(写真4)。ラオスの鉄道は、いわば飛行機のような扱いなのかもしれない。しかも電車は全て指定席。日本やタイなら自由席は通路に立って立って乗るということもあり得るが、ここではそれはない。
駅構内に入り、プラットホームへ入ろうとするも、ものすごい人だかりのため、とりあえず待つことにした(写真5)。駅舎は大きいのに、土産物屋やお店などない。トイレのみである。こういう点もなんだか駅らしからぬ光景である。人込みが少なくなり、プラットホームに入るため、並ぶ。駅員がチケットをチェックし、チケットにあるQRコードをポータブルの機械で一人一人読み込んでいる。どうりで混むわけだ。ようやくプラットホームへ(写真6)。びっくりしたのは、電車が来るまで、どの位置で待ったらいいのかがわからない。よくよく考えてみると、日本では、1両目、2両目と車両の位置表示があるが、ラオスにはない。車両が入ってくるまで、どこで待ったらいいのかわからない。日本では意識もせず電車に乗り込むが、実はいろんな表示がなされ、目的地まで誘導されていることを改めて知る。
さて、なんとか電車に乗り込む。またもや思いがけないことが起きた。5人分のチケットを旅行会社に依頼し、購入したものの、5人が並んで座るわけではなかったのだ。3人、1人、1人と、3か所に分かれての乗車となった(写真7)。日本なら、当然皆一緒に座ると思うだろう。とはいえ、5人分は5人分である。ウドムサイまで距離にして339km、バンビエン、ルアンパバンと停車し、ウドムサイ駅に到着となる。電車内では、コロナの影響もあって、ほとんどの人がマスクをし、黙って座っている。車内販売もない。Wifiは、田舎を走っているせいか、ほぼ届かない。そのため、携帯をいじることもできず、ただぼーっと景色を眺め、目的地に着くのを待つのみであった。2時間40分余りで、ウドムサイに到着。プラットホームを降り、外に出る。駅舎を振り返ると、ここでも「ウドムサイ」というラオス文字の下には、「孟賽」という漢字が見える(写真8)。初めてのラオス中国鉄道、いや中国ラオス鉄道、いやいや中老鉄路。やはり『中老鉄路』というのが一番ぴったりのようだ。
それでも13年ぶりのウドムサイ。見上げれば、眩いばかりの青空が広がっていた。
【次号に続く】