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アソシエイトレポート 2023年1月

タイの辺境の地は夢の始まり(続・続編)

小熊 誠
ラオス人民民主共和国(プロジェクト業務調整)

【思い出の地、バンコク】

懐かしい。2年7カ月ぶりのバンコク。フアランポーン駅周辺を散策すると、すぐ近くを流れるクルンカセーム運河沿いの歩道は整備され、かつて廃屋だったようなところも、若者向けのおしゃれなカフェになり、80年代旅社だったところが、モダンなホテルへと様変わりしていた。たった数年のことだが、かつて訪れた場所は姿を変え、確実に過去の思い出となりつつある。

フアランポーン駅を離れ、MRT(地下鉄)でスクンビット駅に向かう。スクンビット駅地下街からBTS(高架鉄道)アソーク駅のある地上に上がると、大きなエクスチェンジタワーが見える。JICAタイ事務所が入っているビルだ。とても大きく威厳のあるビルである。こんなところで働いていた自分が懐かしい(写真8)。

さて、バンコクの中心部まで来た。どこに行くとしよう。まずはナナまで歩くとするか。ナナに向かう道路は、ビールや生ゴミの汁で路面がヌルっとし、夜明けのバンコクのすえた匂いがする。私にはこの匂いを含め、何もかもが懐かしい。フアランポーン駅周辺を歩き、アソークからナナまで歩いたせいか、汗びっしょりである。マクドナルドかどこかで涼みたいところだ。ナナのマクドナルドに辿り着くと「12時OPEN」という看板が下がっていた。ここのマクドナルドは、24時間営業だったはずだが。ところどころにコロナの影響が垣間見える。それではと、近くのグレースホテルのコーヒーショップに行ってみる。グレースホテルは、アラブ人街にあるアラブ人専用とも言えるホテルで、深夜はタイ人女性が客待ちをし、昼間は普通のコーヒーショップで24時間営業のところである。久々にグレースホテルに着き、受付奥のコーヒーショップを望む。しかしながら、一階のコーヒーショップには一面べニア板が貼られ、完全にシャットダウンされている。営業停止か。まるでコロナ禍の残骸を見ているようだ。思い出の地は少しずつ様変わりしている。

次に、BTSでナナ駅からプロンポン駅に向かう。プロンポン駅まで行くと、プロンポン周辺の再開発がすさまじい。エンポリウム、エムクィーティエと、すでにある大きなショッピングモールに加え、さらにエムスフィアというショッピングモールが建設中であった(写真9)。デパートの前にはプミポン国王の王妃、クイーンシリキット王太后の写真が飾られていた。昨日はクイーンシリキットの誕生日、タイでは母の日である。母を敬うタイ、私はこういうタイが好きである。

写真8 アソーク駅、右:エクスチェンジタワー
写真9 プロンポン駅、左手前:エンポリウム、右:エムスフィア

プロンポン駅の次は、エカマイ駅に行く。私がかつて住んでいたエリアである。エカマイ駅に降り、子供たちが通ったSt. Andrews International School Bangkokに向かう。毎日子供と通った学校である。子供に見せたい思いから、自撮りで写真撮影(写真10)。そこから歩いて、家族で住んでいたJasmine Grande Residenceに向かう(写真11)。ここは長期滞在者用のホテルでもある。レセプションに行くと馴染みのホテルマンがいた(写真12)。「サワディークラップ!今はどこにいますか?子供は大きくなりましたか?奥さんはお元気ですか?」など聞かれ、久々の再会に話しが弾む。思い出の地である。ちょっとした出会いであるが、本当に懐かしい。また家族でバンコクに来たい。そんな思いに駆られながら、急に心が晴れてくる自分がいた。そして、昨日から寝ていなかったからか、どっと疲れが押し寄せてくる。

写真10 エカマイ駅、St. Andrews International School Bangkok
写真11 プラカノン駅からJasmine Grande Residenceを望む
写真12 Jasmine Grande Residence Reception

次はどこに行こう。疲れで頭が回らない。iPhoneで、ウドンタニ行きの飛行機をチェックすると、15:55発のノックエア便がある。今から空港に行っても間に合うと思うと、もうこれで旅も終わっていいかなという思いがしてきた。普段ならタクシーで空港まで向かうところだが、今は旅の途中だ。BTSでモーチット駅まで行き、そして、空港バスでドンムアン空港に向かう(写真13)。バンコクに住んでいた頃は、空港バスなんて利用したことがなかった。昼間のドンムアン空港に到着すると、タイ人帰省客でごった返していた。これも金曜日が母の日で、3連休だからだろう。ノックエアのカウンターに行くと、幸いまだ数席分残っていた。当日買いで多少高かったが、もう引き返すわけにもいかない。早速、ウドンタニ行きのチケットを購入。ドンムアン空港で昼食を取り、飛行機を待つことにした(写真14)。バンコクまでの弾丸旅行も、あっという間に終焉を迎えようとしている。

【次号につづく】

写真13 空港バス
写真14 ドンムアン空港、ノックエア
参照:BTS・MRT 路線図