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アソシエイトレポート 2022年8月

海外送金に頼る生活

岩田 章一
サモア独立国(企画調査員)

大洋州勤務を経験して、国の概況や情報などを見ると、経済指標に海外送金というのをよく目にします。なんじゃこれ?って経済音痴の私は印刷ミスかって思っていましたが、話しを聞くとなんとこれが各家庭にとっては大きな収入源で、国家の貿易収支に大きな影響を与えているようです。

私はポリネシアの経験しかありませんが、トンガやサモアとも若者の働きたい国の1位はニュージーランド、次にオーストラリア、そして、アメリカ(ハワイ含む)です。これらの国は家族や親戚など頼れる人がすでに移住しているので、支援を受けやすい、頼れる人がいるというのも理由になっています。さらに、ニュージーランドとオーストラリアは、季節労働者(農業・果物の収穫などの作業)を募集しており、トンガやサモアの若者にとっては、仕事を確保できる人気の職業となっています。そんな制度もあり、ニュージーランドとオーストラリアは、大洋州の親分のような存在となっています。

大きな工場や企業が殆どない島国にとって、高校卒業後に仕事にありつける人はほんの一部の人となっています。トンガ・サモアの最大の雇用は公務員ですが、募集枠が少なく、且つレベルが高い狭き門となっています。その他の雇用先として、中小企業も少しありますが、基本は家族・親戚優先となっているため雇用がそんなに増えることはなく、若者の雇用問題は大きな課題となっています。そんなこともあり、ニュージーランドやオーストラリアでの季節労働者の受入れは、大きな収入源となる人気の職種となっています。これらは、飛行機代、住居は担保され、海外送金まで出来る収入があり、時期にもよりますが、短期間から長期間のプログラムです。また、季節労働が終わり、そのまま滞在出来るケースもあるようで、サモアやトンガの大家族や、職を求めている若者にとっては魅力的な仕事で、応募が開始されると多くの若者が殺到します。

海外送金に関するサモアの情報では、第3国から海外送金をしてくれる人は、受取人から見て、息子や直接の兄弟が高く、次に娘、そして姉妹となってるようです。さらにサモア生まれで国外に出た人のほうが、移住先の2世・3世よりも家族を支える意識が強いようです。また、送金の頻度は基本的には毎月のようですが、伝統文化や習慣に合せて不定期送金もあるようです。例えば、クリスマス、母の日、教会関係、冠婚葬祭、コミュニティーへの貢献など、祖国の家族からお金送って~って連絡が来れば、頑張って送金しているようです。また、お金だけでなく、衣類や家電など家庭で利用できるものと転売できる物品の仕送りもあるようです。

送金方法は、銀行や金融機関を通すのがメインで、金融機関はいつも長蛇の列を作っています。大洋州の不思議なところは、アフリカのようなモバイルマネーはまだ普及してないです。

送る方は家族の絆とはいえ、大家族を支えるための送金は、自分の生活もあるので結構きついんじゃないかなって思うのですが・・・・・自分で稼がず家族・親戚の収入を頼りにしているこの制度の可否は別として、家族・親戚による海外送金は、切っても切り離せないシステムで、島国を支える大きな経済効果になり、貿易赤字を相殺する重要な役割を果たしているようです。

「働からざるもの食うべからず」という言葉がある日本人には、海外送金はあまり理解の出来ないことかなっと思いつつ、わたくし・・・十年近く単身赴任で家族に仕送りを送り続けていました。最近は学費が高くなったので、これまでの額では足りないとまで言われています。。。

募集が開始され面接を待つ若者
将来の家族を支える子供たち