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アソシエイトレポート 2022年1月

介護の日々に心迷わす、評価分析案件は人手不足?

佐々木 雅子

2018年11月に長期専門家の業務を終えてカンボジアから帰国した後、しばらく休養しようと考えていました。それで、翌年は高齢の母と、長年住み慣れた東京を離れ母と同居して日常のお世話をするために実家に戻っていた姉と、3人であちこち旅行にいって羽を伸ばすことにしました。でも半年ほどすると、そろそろ次の仕事を、と考えるものです。

2019年秋、ある夜半に母がトイレに行こうとして転倒し、嘔吐もあったので、明け方、救急車を呼び病院に行ったところ、手首の骨折と腰の圧迫骨折で即入院、手術となりました。術後、胃からの出血等があり、整形外科病院では看きれないということで5日目には別の病院の内科に転院し、2か月後に退院しました。入院中に要介護3の認定を受けていましたが、その前年、母は84歳で私の任地カンボジアに旅行にきたり、私の帰国時に自ら車を運転して空港まで迎えに来てくれたりしていたほど活発な人で、頭はボケておらず、気持ちはしっかりしており、まだ施設に入る必要はない、自宅で過ごしたいというので、そこから本格的な在宅介護の日々に入りました。

その後、母はかかりつけ医から循環器科での受診を勧められ、検査入院のつもりが、翌日の手術で心臓ペースメーカーを埋め込むことになりました。退院後、自宅で毎日、寝て過ごしているか、調子のよい時は座ってテレビを見ている母なので在宅介護といってもそれほど手はかからず、料理・掃除・洗濯等の身の回りのお世話の他、内科、外科、脳神経外科の3つの病院まで一月半毎に車で送迎と、日常的なケアは入浴補助と失禁時の後始末位で済んでます。介護というより介助という程度です。時々、景色を見に外に連れ出したり縁側に座らせたりして日光浴させてます。

そんなこんなで「次の仕事」どころではなかったのですが、一応、母の入院中から企画調査員やプロジェクトのコンサル専門家等、5案件に応募・応札して、結果は連敗していました。

皆さんご存じのとおり、2019年から新規案件が減っていたことに輪をかけて、世界的なコロナウイルス蔓延で海外移動が困難になりましたし、仕事がほとんどできない状況になってしまいましたね。それでも2020年には5つの案件に応募・応札しました。結果はやはり失注の連続でした。

今年、2021年に入り、ようやく状況が好転してきたようですね。まずは長年関わってきた民間連携の企画書を出しましたが、これは不採用でした。さすがに2年以上仕事をしていないと、もう引退すべきか、とか、母の介護に専念すべきか、ということが頭をよぎります。どうしようかな、仕事がないままでいつまでタックに所属していられるかしらね、と考える日々でした。

私はこれまでにも時々、タックの他の人のプロポ作成をお手伝いしているのですが、今年もその機会を頂き、ケニアの某プロジェクト詳細計画策定調査の栄養改善担当のプロポ作成をお手伝いすることになりました。ふと見ると、その分野担当案件と同時に同じ調査の「評価分析/組織連携」担当案件の公示があることに気づきました。担当分野の調査内容は異なっていましたが、それ以外、記載内容は全く同じでした。それで私もそのコンサル業務に応札することにしました。

それまで評価分析を担当した経験は1度しかなく、しかもそれは研修事業のインパクト調査だったので、通常のプロジェクト評価とは異なっていました。自分がプロジェクト専門家として参加していた案件で中間評価や終了時評価を受ける立場だったことはこれまでに何度かあり、評価分析で来るコンサルさんはオールマイティな優秀な方が多い、という印象で、自分は分野専門家のほうが向いている、と思っていました。ちなみに私の専門分野は行政・ガバナンスです。地方行政案件が多いですが、民主化支援や行政組織強化、政策策定支援、行政官研修事業等の調査案件やプロジェクト実施にこれまで従事しています。企画調査員も2度経験していて、地方分権化分野の援助協調を主担当していたこともあり、組織連携を含めマルチセクトラルな支援に慣れています。それもあって、このケニアの「評価分析/組織連携」業務の組織連携の調査は得意分野と言えました。

評価分析については、いろいろと面倒な作業が多そう、と思っていたのですが、今回やってみて、意外に私も向いているかも、と思いました。ただ、そう思えたのはきっと調査団メンバーがよかったことと、現地、ケニア事務所の案件担当者が、なんとタックの清水正さんだったからだと思います。清水さんには大変お世話になりました。コロナウイルス感染予防で現地調査期間でも相手政府機関等との会合はウェブ会議が多かったのですが、毎回スマートに、そしてスムーズに進行を担当していただき、さらには地方出張にも同行していただいて様々な調整業務を担っていただく等、仕事上はもちろんのこと、土曜日にはウォーキングサファリやモールに連れて行ってくださって、プライベートでもケニアに早く馴染めるよう大変気を使ってくださいました。お陰様で楽しくお仕事させていただけました。清水さんとはいつだったかタックの飲み会で一度お会いしただけでしたが、ケニアでいろいろとお話しすることができて、タック仲間という感じがして気持ちよく仕事ができました。(協力隊OBOG同士ということもあるでしょう。)

この案件、受注できたことが判った時は、ケニアでの業務は初めて、評価分析担当業務も初めてという、この歳になって(すでに50代後半です)初めてづくしで何かと心配が多かったのですが、お陰様で「まだまだやれる」という気持ちになりました。一方で、東京ではキャリアウーマンだった姉に母の介護を任せきりにすることに、申し訳なさを感じたりもしています。でもまだ引退を考えるのは早いかなと思うようになりました。

9月末の某公示案件で配布資料提供依頼したところ、担当者から「他案件含めて評価分析団員の応札不調が続いており、ご応募お待ちしております」とのこと。自分が参加できそうな行政・ガバナンス分野の案件が減ってきていることもあり、今後、評価分析案件にチャレンジすることが多くなりそうです。