オリンピック選手たちとフライト
中元 則晶
プロジェクト業務調整/ザンビア共和国
6月末から1ヵ月ちょっと健康管理休暇で一時帰国した。日本到着後14日間は自己隔離。実質3週間ほどの休暇だった。私の赴任国はザンビアである。当初はエミレーツ航空でドバイ経由で地元である関西空港着で予約していた。ザンビアでは5月から新型コロナ感染が爆発し雲行きが怪しくなってきた。6月に入り、首都ルサカではレストラン内での飲食は禁止となり、バーやスポーツクラブなども閉鎖となった。ただし、バーに限っては金曜と土曜の22時まで営業できるというなんとも不可思議な政策だった。もっともクラスターが発生しやすいバーがOK?市民も訝っていた。
そして6月の中旬、エミレーツ航空がザンビアからの乗客は乗せないと発表した。ドバイからザンビアに来る乗客はOKなのだが、ザンビアからドバイへの帰り便は貨物専門機となった。
ザンビアから日本への主ルートは南アフリカのヨハネスブルグ経由、エチオピアのアジスアベバ経由、アラブ首長国連邦のドバイ経由である。南アフリカは変異株流行国であることからこの時点では渡航禁止となっていたため、残されたルートはここ数年で急激に発展してきたエチオピアの首都アジスアベバを拠点とするエチオピア航空しかない。エチオピア航空は日本(成田)に乗入れているアフリカ唯一の航空会社だ。今では南アフリカのヨハネスブルグと争うアフリカのハブ空港になっている。
仕方ないのでエチオピア航空で成田着発とした。当たり前だが成田は日本だ。だが私には成田での14日間の自己隔離は苦痛でしかない。日本でも日本に帰ってきた気がしない。
到着後、コロナの検査や追跡システムなどのアプリのインストール、その他多くの説明を受けてやっと空港外に出る。公共交通機関が使えないので予約していたレンタカーに飛び乗りそのまま大阪まで一気に帰り、大阪のホテルで自己隔離。足は出るが4万円までJICAの補助が出るので思い切ってレンタカー乗り捨てにした。
今回の休暇はTVでオリンピックを楽しんだ。個人的にオリンピックには何の興味もない。たまたま休暇がその期間と重なっただけだ。
そして任国への帰路。成田空港に到着。なにやら様々なジャージ姿の人がいっぱいいるではないか?なんだコイツら?学生か?なんか世界大会やってたっけ?TVでオリンピックを見ていたがTVだったため自国開催ということにあまりピンと来ていなかった。これは日本におらず、オリンピック開催までの日本の空気を知らなかったせいだろう。
ジャージの背中にBurundi、Cameroon、Niger、・・・とか書いてある。おお!これはオリンピック選手たちか?最も多かったのが南アフリカでジャージやTシャツ、スポーツバッグなども数種類あるようでSouth Africa Olympic Team 2020と入ったスポーツウエアを着ている。
近くにいた南ア人(どうせなら綺麗なおネ~ちゃんがいいので)に「オリンピックゲームに出たの?」と聞いてみると「Yes, We are」との返事。少し会話をしていると、今回の大会は競技が終わった選手は5日以内に選手村を出なければならないとのこと。選手村を出て閉会式まで残ろうとすれば東京のバカ高いホテル滞在を余儀なくされる。多くのアフリカ諸国にそんなカネは当然ない。南アフリカはある程度カネはあるだろうが、選手数が多い。帰るしかないのだ。これらの選手に交じって私もチェックイン。
出国手続きまで時間があるのでブラブラと閑散とした成田空港内で時間をつぶす。日本のお土産やオリンピック記念グッズを買う各国の選手がここにもゾロゾロ。空港でのお土産や記念グッズはバカ高いに結構買っている。こいつらアフリカにいて若いのにカネ持ってるなぁと感心しつつ、出国手続きを済ませて搭乗ゲートの待合所に行く。
まあ、いるわ、いるわ。ザっと見ただけで、南アフリカ、ブルンジ、ナイジェリア、コートジボアール、ニジェール、カメルーン、ケニア、ザンビア、エチオピア、アンゴラ、タンザニア、、、、。ヨーロッパ勢は北回り便で帰るのだろうが、アフリカ勢は運賃が安いことやアフリカに唯一直行便があり、アフリカのハブ空港にもなっているエチオピア航空を利用するようだ。
チェックインで並んでいるときもそうだったが、何しろ選手たちの態度というかふるまいがとにかく目に余る。機内に入ると狭い空間でさらにそれが目立つ。小学生の遠足や修学旅行でもこれほどうるさくない。スポーツは秀でているのかもしれないが、彼らからスポーツを取ればもはやそれは普通、いや、それ以下のマナーも社会性も持ち合わせないただの素行の悪い兄ちゃん、ねーちゃん達だ。私は相手が悪くて腹が立てば老若男女、社会的地位なんぞ関係なく怒る。この時も周りのうるさい選手に怒鳴った。が、それよりもCAも呆れたのだろう。あまりの態度の悪さにCAから叱られている選手が何人もいた。そこはエチオピア航空のCA。日本の航空会社のCAのように丁寧に注意はしない。怒鳴りまくっていた(笑)。
後日、オーストラリアの選手団がやはり同じような素行の悪さで日本航空がオーストラリア政府に苦情を訴えたことを知ったが、オーストラリアのような先進国でもその程度なのかとまんざらアフリカ人が特別ではないようだ。ただ、これらのアフリカ人選手全員こういう素行ではなかったことは言うまでもない。最終目的地が同じだからか、私の隣に席はザンビア人のボクシング選手だったが、マナーもよく非常に好青年だった。彼とその他数名のザンビア選手たちとはルサカの空港を出るまでずっと一緒だった。
この成田からアジスアベバまでのフライトだが、一般人は20名もおらず、オリンピック選手専用機のようであった。