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アソシエイトレポート 2020年2月

ドミニカン・サッカー

友清 広平
ボランティア調整員(ドミニカ共和国)

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首都のプロ野球場の様子

ドミニカ共和国の国技は言わずと知れた野球。2013年のWBCでは世界一に輝く程の実力があり、少年からシニア世代まで広く国民に愛されているスポーツである。選手たちはメジャーリーグを目指し、国内にはスカウト網が張り巡らされ、多くの若者がアメリカドリームを夢見て海を渡っている。国内にはメジャー球団だけではなく、あの広島カープのアカデミーもある。 実際、人口約一千万人の島国からメジャーでプレーするドミニカ共和国人は100名越えとアメリカ以外では最多と10名以下の日本も圧倒していることが分かる。(2019年現在)

経済格差が顕著なドミニカ共和国では一昔前のブラジルやアルゼンチンのサッカーのように野球で人生を変えることが若者たちの希望となっている。

今回はそんな中、ドミニカ共和国におけるマイナースポーツであるサッカーについて書いてみた。FIFAランキングは158位(2019年12月19日現在)、国内にプロリーグはあるものの2015年にスタートしたばかりで1部12チームのみ。昨年CONCACAF(中南米カリブ海地域)のチャンピオンズリーグを観戦したが、サポーターも数えるほどで決して盛り上がっているとは言えない。

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保護者、学生の熱狂的な応援
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サッカー特待生が各チームの主力を形成
※決勝戦の様子

そのマイナースポーツなサッカーが、私立学校やインターナショナルスクールではメジャースポーツだったことには少なからず驚かされた。年間を通して、11人制、フットサル、ソサイチ等の大会が大小途切れることなく行われ、電話会社、コカコーラや大手銀行、スポーツメーカーなどのスポンサーが付き、ユニフォームから選手たちのドリンクまで全て支援されている。会場は家族や同級生などで埋まり、熱狂的な空間を生み出している。

私立やインター校は生徒数が少ないため、チームは少数精鋭となるが、規模の大きい私立校だと小中高のカテゴリー含め100名以上の選手が毎日のようにサッカーの練習に励んでいる姿には感銘を受けた。

レベルは高いとは言えないが、日本の私立高校のように各学校サッカー特待生が数名いる。彼らは低所得層の青少年が多く、富裕層の生徒に比べて、目がギラギラしているのが印象的。英語教育の学費全額免除にサッカー用品等の支給といった高待遇が受けられる生徒もいるとあって、彼らにはサッカーが成功するツールになっている。

当初、高額な授業料を免除してまでマイナーなスポーツであるサッカーを強化することに学校側にどんなメリットがあるのか分からなかったが、各大会には日本の学生スポーツでは考えられない賞金が発生していることを知り、納得させられた。

例えば、クラーロという大手電話会社がスポンサーとなるフットサル大会では、昨年64校が参加して各地で熱戦が繰り広げられたが、優勝校にはトロフィーや賞状、メダル以外に賞金40万円と選手全員に携帯電話が与えられた。準優勝となった愚息の学校は賞金20万円である。首都6校のインター校で開催された11人制サッカー大会でも優勝校に賞金があったりと学校側のメリットは認知度以外にも垣間見えた気がした。

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2位でも20万円程度の賞金が学校に渡ります

一方で、スポンサー確保の有無によって大会の継続性や規模が大きく左右される側面や選手やコーチなど参加者側が賞品目当てになってしまい、サッカーに対する熱意や自己研鑽、オーナーシップやモチベーション維持が健全に保たれるのかと勝手に心配してしまう。そのあたりの在り方は国際協力の援助のそれに似た感覚があると感じるのは私だけだろうか?

更に毎年アメリカの大学主催でトライアウトが開催され、合格者にはサッカー特待生としてアメリカの大学進学の切符が得られる。昨年は愚息の学校のキャプテンが見事選ばれ、書類の準備が終われば、晴れて渡米する予定である

どうだろう、野球のアメリカンドリームには匹敵しないかもしれないが、ここドミニカ共和国でマイナーなサッカーであってもインター校に通うことで英才教育が受けられ、将来的に就職や進学に有利に働く大きなメリットとなる。ラテンアメリカの多くの国がそうであるように、ここドミニカ共和国でもアメリカへ移住することは成功する可能性が広がることを意味する。サッカーをとおしてアメリカで働く、進学できるチャンスが開けることはサッカー少年にとって、夢への近道となっているのかもしれない。

開発途上国で勤務することで、色んな出会いや発見がある、そんな中からたくさんの学び、刺激を受けている今日この頃。