ミャンマーのルーウィンザ

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ルーウィンザとはビルマ語で人の生まれ変わりのことを意味する輪廻転生のこと。以前もこの誌面で同じ内容を紹介したことがあった。ふとあの時の書いた内容を思い出し、プロジェクトのスタッフに「以前こんな話を聞いたことがあったんだけどね」と言った。すると彼は「僕のお母さんもそうだったみたい」と言うではないか。え!またもやこんな身近で生まれ変わりの話が聞けるとは、と思いつつどんな話かと尋ねてみた。

彼のお母さん(彼女)は今年64歳。生まれは母親(彼の祖母)の地元のミャンマー中部の町メティラ近郊のイエジョ村。彼女の母親は5年前に94歳で亡くなったが戦時中は日本軍と英軍の激戦から逃れ九死に一生を得た。彼女が生まれてから言葉がしっかり話せるようになると、周りの人たちに昔話のようなことを語り出すことがあった。家族は皆どこでそんな事を覚えたのかと、けげんな面持ちで聞くだけだった。しかしそのうち言葉をどんどん覚えてくると話の内容が鮮明になってくる。よくよく聞くと、彼女は8マイル離れたタンダ村での生活について語っていた。何と彼女は生まれる前は夫として家族と共に農業を営む農民だったらしい。妻や4人の子供の名前や田畑の作業や、自分が病気で48歳で死んだことなど全て事細かな話をした。そしてその村の「自分の家族」に会いに行かせてほしいと母親にお願いした。娘の話が本当だと感じた母親はある日その村まで娘を連れて訪れることにした。村が近くなると彼女は「自分の家」まで母親の手を引いて歩き始めた。

訪れた農家の家や家畜舎のつくりや様子は彼女からたびたび聞かされた内容そのもの。そして家の中から出てきた人に彼女が語る一部始終を伝えると、家族全員の名前もすべて聞いたままだった。亡くなった自分の夫が生まれ変わって自分の家に戻ってきたことに妻も子供たちは驚愕する共に感激に包まれ彼女をみんなで抱きしめ離さなかった。彼女は「自分の家」に入るといつもくつろいでいた場所に座り、当時労働省で働いていた兄のことを妻に尋ねたりした。母親も自分が生んだ娘が生まれ変わりの運命を経て以前の家族と再会できたことに感激だった。しかし彼女が生まれる前のことを語ることができたのは10歳ぐらいまでだった。その後は記憶がなくなり一切語ることはなかったという。しかしその後も「彼女の家族は」正月などのたびに必ず「自分の夫や父親」を訪ね共に時間を過ごした。

輪廻転生はビルマ仏教の教えの1つでもあるが、この人は死んでも何が何でももう一度自分の家族に会いたい一心で死後の世界をさまよい、因果応報のまま生まれ変わることができたのかもしれない。この人の死んでまでも変わらぬ家族に対する愛情と、それまでの行いが生まれ変わって再会することを実現させたのだろう。さて、自分はこの人と同じような愛情と生き方ができているのかどうかとふと考えさせられた。

以上

タイ 業務調整    

碓井哲郎