トルコ ギレスン A to Z

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データ

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小村 浩二

企画調査員(ボランティア事業)

2014年、活動は基礎情報の収集から開始された。

事前に得られた情報は、全国レベルのものであった。欲しいものは、全国はもちろんであるが県のものである。トルコの中でギレスン県がどのように位置づけられるか。これまでの経験から県レベルの情報が得られるか懐疑的であった。

案の定、データ(veri)収集は簡単には進まなかった。人口ひとつとっても就業別、性別、地域別と条件をつけると怪しくなってきた。それでも以下の資料を入手できた。

“Turkey in Statistics 2013”2014 Turkish Statistical Institute

“SEÇİLMİŞ GÖSTERGELER GİRESUN 2012”2013 Türkiye İstatistik Kurumu

“GİRESUN İL RAPORU”2013 DOKAP Bölge Kalkınma İdaresi Başkanlığı

“2013 YILI FAALİYET RAPORU”2014 T.C. Gıresun Valiliği İl Gıda Tarım ve Hayvancılık Müdürlüğü

しかし、肝心な農業に関する基本統計が得られなかった。農家数ひとつとっても極めてあやふやなものであった[1]。その一方で人口集計に「15歳以上で未婚、既婚、離婚、配偶者死亡」、「識字・非識字者数」、「学歴」など、これらが性別、地域別にあるのである。活動目的が異なれば興味深いデータではある。

ギレスン県は、沿岸部、高原地帯、そして内陸部とその地勢から気象条件も三者三様である。農業にとって気象データは必須である。ところが、内陸部チャモルックでイチゴの実証栽培をやるにあたり参考とした気象データは、隣接するシェビンカラヒサルのそれではなく、なんと657キロメートルも離れたウードゥル県(Iğdır)を参考にしていた。ウードゥル県は、アルメニア、アゼルバイジャン、イランと国境を接する東部の県である。チャモルックの気象データが入手できなかったのはもちろんであるが、遠く離れているとは言え気象条件が似ているという現場農業技師の意見を取り入れたとのこと。どのような比
較検討がなされたか霧の中である。しかし、トルコ気象庁のウェブサイトには、ギレスン県内の各郡の気象情報が毎日掲載されている。今後の計画策定にあたり必要な気象データを入手すべくギレスン気象局にでかけた。ギレスンとシェビンカラヒサル以外は、ここ数年で観測が始まったばかりでサービスの提供は最低3年間の試用期間を経てからとのことであった。とりあえず、ギレスンとシェビンカラヒサルのデータを入手できた。

数値データを欲しがる日本人、何百キロと離れていようが印象で決めるトルコ人である。





 

高原地帯

内陸部

沿岸部

 

Yayla

高原

トルコ人は遊牧民である。

トルコの遊牧は、垂直移動である。つまり、夏は涼しい山に家畜を放牧、冬は寒さを避けて低地に移動する形態をとっている。日本での夏山冬里方式に似ている。

夏、家畜を放牧する高原をヤイラという。ヤイラには、天然の牧草地が広がりこれをメラ(Mera)という。ヤイラ、メラは、そのほとんどが国有地である。古くから村ごとに区分けされており入会地となっている。

農家は、代々引き継いできた場所に夏の間すごす小屋を持つ。小屋の回りには自家消費用の野菜畑があったりする。この小屋は、法律で恒久的なものを建築することが禁止されている。

ギレスン県には、標高1,750~2,200メートルに位置する7つのヤイラがある。それは、Kümbet, Kulakkaya, Bektaş, Tamdere, Karagöl, Eğribel, Kazıkbeliである。

2014年7月にヤイラを巡った際に見掛けた家畜は、ウシ、スイギュウ、ヒツジ、ヤギであった。人びとがヤイラで活動する期間は、5月中旬から9月下旬にかけてである。滞在中、搾った乳をバターやチーズに加工する。特にスイギュウの乳製品は高い値がつくそうである。

それぞれのヤイラには、拠点となる集落がいくつか形成されている。そこはアクセスがよく週末には暑さを避けて沿岸部から訪れる人でにぎわう。もちろんバター、チーズなど乳製品からヤイラの野菜、蜂蜜などが売られている。それ目当てで来る人たちもいる。

このヤイラで何かできないかと考えてみた。

ひとつのアイデアが「高原野菜」であった。バザールでヤイラの野菜として売るものが目についたこと。また、ヤイラで牧草地を浸食するレンゲツツジを相当面積掘り起こし整地したところがあった。牧草地の再生である。これを野菜畑にできないか。夏の間、ヤイラに住む人はヘイゼルナッツの収穫に煩わされることもなく野菜生産に集中出来るのではないか。将来的に「高原野菜」として県外に販路を拡大できないか、と夢も大きく広がった。

しかし、実現には大きな壁が立ちはだかった。ヤイラは、そもそも国有地であること、水源地でもあることから開発にはいろいろと制限のあることがわかった。

例外として、鉱山開発、観光開発などが認められているようであるが、環境破壊につながるような開発はそうそう簡単には認可されないだろう。

もちろん食料危機でせっぱつまり農地の拡大が必要となれば、法律も改正されるかもしれない。

 

補足

2005年以来、黒海に面するサカリヤ県の森林破壊が進んでいる。過去においては、その主たる原因は違法伐採であった。しかし、この状況が5・6年前から変わってきた。別荘の建築ラッシュに取って代わられた。つまり高原リゾート開発が進んでいるのである。この開発をリードしているのが、サウジアラビアとカタールの投資家なのである。

自然環境、特に森林に恵まれた黒海地域への湾岸諸国からの観光客が今世紀に入る頃から増加した。緑に目を奪われこんなところに夏の間だけでも住めたらと思うのは当然であろう。わたしもその内の一人であるが、如何せん小市民のわたしには先立つものがない。しかし、アラブの人たちは違った。また、そこに目を付けたトルコ人もいた。今、観光開発と環境保全がせめぎ合っている。

トルコの黒海沿岸は、急峻な山が海にせり出していることから開発からは取り残された地域であった。つまり自然がよく残されている地域である。高原のお花畑に蜜を求めて集まるミツバチのごとく木々に覆われた山々に引き寄せられる中東の人々がいる。高原に咲く花があるからミツバチが群れ芳醇な蜂蜜を恵んでくれる。現世で蜜の川が流れる天国を演出するのなら持続可能な開発、保全もしようが、来世でこその天国ならば、いずれ黒海沿岸も地中海沿岸のごとくなるのも時間の問題であろう。このままでは。