昼下がりのフランス大使公邸ピアノ発表会

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セネガル 専門家(業務調整) 

岡安利治

 

2009年にマダガスカルで中古購入したピアノを今も保持している。子供の頃に、楽器に触れなかったせいか、楽譜をみても、エジプト象形文字をみているようである。今回のセネガル滞在はアパート生活で、妻も子供たちも好きな時間にすきなようにピアノをひけないでいるが、子供たちは週一回、日本人の先生にピアノを教えてもらっている。前回のセネガル派遣(2005-2009)の際とおなじ先生である。先生はタクシーを乗り継いで、ダカール市内を朝から夜遅くまで、様々な国籍の方、子供から大人まで、幅広く教えている。先生は教え子に定期的にピアノ発表会を企画する。先生曰く、「発表会がないと生徒が真面目に練習しない。」そうである。1つの発表会が終わると、次の発表会にむけて、仕上げたい曲を生徒と決めて、レッスンに励むそうだ。先生は日本のピアノ発表会と異なり、父兄の経済負担や人的負担を依頼せず、自らのポケットマネーでささやかな発表会を企画する。

夏休み前の発表会、先生の教え子がフランス大使のご子息ということで、フランス大使公邸で行われることになった。前回のセネガル滞在の際のピアノ発表会(2009年)もフランス大使公邸であって、痛く感動したのを記憶している。フランス大使公邸は、旧宗主国ということもあり、一等地にある。大使公邸の庭からは海が一面にひろがる。会場になる大広間にはフランス革命時の大きな絵が飾られ、グランドピアノが常設されており、ほどよいコンサート会場に変身する。

土曜日の昼下がり、子供たちの発表予定時刻に少々余裕をもって、8年ぶりに個人車両で公邸につくと、2名の警備担当者は名簿で私たちの名前を確認して、公邸内に駐車させてくれた。テロ対策に過敏なこのご時世に、形式的なセキュリティチェックもなく、粋な計らいである。今回の発表会は2部形式で、小さい子から、小学生ぐらいまでの第1部と、小学生高学年、中学生、高校生ぐらいの第2部である。第一部と第2部の間には、休憩が入り、軽食やコーヒーなどの飲み物がテラスで振舞われた。一面に広がる海を見つつ、コーヒーを片手に顔見知りと談話するのは格別である。

第2部に入り、長女と長男の演奏が終わり、ほっとした。忙しい父兄は自分たちの子供の演奏が終われば自由に帰ってしまうのだが、プログラムをみると、イタリア人マルコ君の名前がある。マルコ君は14歳でアメリカンスクールに通っている。フランス系学校に通う子供たちとは面識もないのだが、前回の発表会でも高校生を差し置いて、トリを務めている。先生によればマルコ君はピアノを職業にしたいらしく、レッスンも週3回、1回につき2-3時間はつづけるそうである。会場では演奏を控える子供たちが、自分の番が近づくと緊張した趣で椅子に座っている。しかし最終発表者であるマルコ君の姿が見当たらない。マルコ君の名前が呼ばれると、彼は後ろのほうから、他の発表者と異なり、大広間の中央を通らずに、入り口の通路から登場した。演出の仕方を知っているのである。マルコ君は、緊張することなく、音楽を楽しむようにグランドピアノを演奏する。1つの曲が終わるたびに、拍手喝采で、プログラムには3曲記載されていたが、5曲は弾いていた。マルコ君は父親の転勤で、イタリアに戻るそうでこれが最後の発表会だそうだ。先生によれば、帰国後、マルコ君は帰国後、交響楽団入りを希望しているが、彼のレベルでも入れるかわからないという。

粋な会場で、粋な演奏を聞き、途上国に滞在していることを一瞬忘れさせてくれる文化的な午後であった。

フランス大使公邸

フランス大使公邸内