土佐備長炭

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セネガル 専門家(業務調整) 

岡安利治

 

ベナンで知り合った知人が、帰国後、四国、高知県室戸市で炭を焼いているらしい。一時休暇の間に、長男を連れて、会いにいくことにした。知人によれば「海も山も川もあり、運がよければ、罠にかかったイノシシと会えるし、備長炭の窯出しもみれるかも。。」という。とはいえ、滞在してる埼玉から車で簡単にいける距離ではない。ハンドルをにぎると眠くなる癖に、「(長男と)交代で運転できないのだから、車でいくのはやめて!」と妻と長女に強く止められ、夜行バスにした。

夜に出発して、翌朝高知につく。帰りも夜に出発して、翌朝には新宿と、時間と費用も効率的だ。高知駅でレンタカーを借りて、約2時間程度、室戸に到着。昼食をとり、親方とよばれる知人の炭焼きの師匠に会いに行く。土佐備長炭研究所(http://www.h2.dion.ne.jp/~seityou/index2.html)親方は69歳。挨拶をすると、「じゃ山でも見に行くか?明日の朝は、朝一番で山に登ろう。」と、土佐備長炭の原木(ウバメガシやカシ)が茂る山々を軽トラックで案内してくれた。その晩、知人宅で、親方が過去に出演したというバラエティ系テレビ番組をみてたが、夜行バス移動の疲れで、ビールをつい飲みすぎ、番組が終わるまえに、寝ていた。翌日、仕事が始まる前に、靴底にスパイクがあるスパイク地下足袋を貸してくれて、親方、私、長男で裏の山に登る。親方はまさに足袋をはいた忍者のように、斜面をあがっていく。親方はところどころ、「ここには罠があるから、真ん中を踏まないように!」と注意を促す。罠にはワイヤーが地中から伸びていて、スプリングが見えるパターンと、輪っかになったワイヤーが獣道においてあるパターンの2種類がある。室戸周辺の山の特徴は急斜面なので、夜行バス移動翌日、息が上がる。

ここ数日に動物が通った気配や足跡はなく、一通り、仕掛けてある罠を確認して、山を下りた。時間にして、1時間ほどだが、最後は集中力がとぎれたようで、スパイク地下足袋をはきつつも、川に落ちた。戻って、親方が廃材で建てたという仕事場で飲み物をいただく。

すると長男が「親方、これはテレビに映っていた家ですね。この階段、上っていいですか?」という。普段は顔見知りしやすい彼が積極的に打診する。階段をあがっていくと特別に別に保管している備長炭が並べてある。「そういえば、親方はアマゾンで炭焼きをしてとか?」と聞くと、「3年ほど通ったかな。」とブラジルアマゾンで焼いた備長炭をみせてくれた。炭の質もよかったらしいが、環境破壊ということで、森林伐採の許可がとれず、頓挫したそうだ。室戸には結構、ウバメガシなどの原生林が残っている。

それらは伐採しても、15-30年かけて、自然に元に戻る。しかし杉などを植林した場合、伐採後は自然に戻ることはなく、再度、植林しなければならない。山を熟知した親方は循環するアマゾンの自然サイクルのなかで、備長炭を作りたかったのかのだろうなあと想像した。その日の午後、以前に罠にかかった鹿とイノシシの肉を土佐備長炭でバーベキューしてくれた。

長男は高知の思い出を語るたびに、初めて食べたイノシシと鹿の肉の美味しさを語る。私の父は結婚前、群馬の山奥で、黒炭をつくっていて、「経済的に厳しかったよ。」というだけで、そのころの様子を語らない。循環する自然サイクルに溶け込む土佐備長炭、長く続いてほしいものである。(以上)

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