ヨルダンでバナナ?

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 小村浩二  ヨルダン在住

   企画調査員(ボランティア事業)

 

ヨルダンに来て初めてヨルダン渓谷へ下った時のこと。アンマンから車で西に半時間も走ると緑が薄れはげ山が連なる。風景が変わった頃、道路脇に数台の車が止まりなにやら記念撮影している。そこには海抜ゼロメートルの標識があった。それを横目に車は下り続けた。

この日の目的地は、海抜マイナス300メートルに位置する学校であった。はげ山の麓にさしかかったところでハンドルを北にきる。道の左右に畑が広がる。露地やビニールハウスで野菜を栽培している。ナツメヤシもある。それよりも目を引いたものがある。電信柱を1メートルほどぶった切ったようなものが畑に突き刺さる形で列をなしている。時々その根元に水をやる農夫を見かけた。しばらく道を走るとそれがバナナであるのがわかった。わかりはしたが、ひどく違和感のある風景であった。

乾いた大地、ここヨルダンにバナナかよ。素直に驚くよりも貴重な水を使ってまでバナナ栽培していることにわたしは納得できなかった。

ヨルダンは、砂漠または半砂漠というイメージが強い。そのせいもありヨルダン渓谷が肥沃であることを見落としていた。渓谷にはヨルダン川が流れ、東側と西側の山地から雨水を集めて死海まで緑地帯が続く。一帯はゴールと呼ばれる肥沃な亜熱帯性の植物帯をなしている。気温は、冬場14℃を下らず夏場40℃まで上がる。

バナナ栽培が出来る条件が揃っているし、実際に栽培されているのを実見した。それでも違和感をぬぐい去ることが出来ない。

アンマンに戻りバナナの話しをすると、同僚がバナナとイランに関する二十数年前の経験を話してくれた。イランから日本に賓客を迎える際、事前に宿泊先ホテルにお願い事をしていたそうである。それは、部屋に置く歓迎用の果物かごの中身についてである。メロンの類いはいらない、バナナを主役に詰め合わせてくれと。メロンは、彼の国では道端で売っているもの。舶来のバナナが何よりものおもてなし。また、外出先で見つけたバナナの値段に驚き、買い込んでホテルの部屋でむさぼるように食べていたらしい。そのくらいバナナが貴重な時代であったらしい。そして、ヨルダンにとって輸入しなくてすむのならそれにこしたことはないと結んだ。

近くのスーパーに立ち寄ると国内産が0.89JD/kg(約135円)、輸入物(エクアドル産)が1.19JD/kg(約180円)で棚に並んでいた(2016年4月9日)。原油が出るわけでもなく、主要な外貨獲得手段を持たないヨルダン、バナナといえども自給できるのであれば確かに貴重な外貨を使わずにこしたことはない。ちなみに、味についてヨルダン人に聞いてみた。甘くておいしい、輸入物はただ大きいだけ、と返事が返ってきた。そうなのである地元産は、沖縄の島バナナみたいに小ぶりである。ちょうど旬ということで買って食べてみた。一房に14本で1キログラム。房の内側には薄く砂ほこりをまとい、外側は満身創痍で店頭にぶら下がっていた。いかにも地元産といったバナナである。味の方は確かに甘みが濃いように感じるがいま少しである。食べ頃のサインであるシュガースポットが表面に出てくるまで少し待ってみたが柔らかくなったくらいであった。

ヨルダンにとって外貨の節約も必要だろうがもっと大事なものがある。それは水である。ヨルダン渓谷に水があるからといって無尽蔵ではない。ヨルダン渓谷では、節水灌漑により野菜を栽培しその野菜は自国での消費をまかない湾岸諸国に輸出もしているのである。「湾岸諸国48時間でヨルダン産柑橘・野菜を3,000トン輸入」という見出しが目を引いた(The Jordan Times, 2016/3/31)。大量に水を消費するバナナ栽培で外貨の節約か、バナナの栽培面積を減らし節水灌漑による野菜栽培を増やして外貨獲得か、どちらがヨルダンにとって益があるのだろう。

地産地消、地場産として付加価値を高められればバナナの栽培も意外とあり得るかもしれない。繰り替えしになるが、この国には「水」という難問がある。

                              

ほこりをまとう内側                            満身創痍の外側                          L: Jordan, R: Ecuador